外国人エンジニアを採用する際のポイント

作成日:2019年11月29日 更新日:2021年3月10日

株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗

今、人手不足が深刻化している状況の中、外国人エンジニアを採用する流れが加速しています。その詳細について解説していきます。

 

世界的なIT人材の需要増加の影響もあって、日本でもエンジニアの不足が深刻化しています。

 

経済産業省が2018年6月に発表している「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」の報告書によると、2010年代後半から2020年にかけ、IoTや人工知能、ブロックチェーン、情報セキュリティといった分野のニーズ拡大によって人材不足は加速しており、各企業とも外国人エンジニアを含めた人材の育成や確保に向けた取り組みを強化しています。
2015年には約17万人の人材不足だったものが2030年には約59万人に膨れ上がることが予測され、日本が世界に取り残されていかないためにも、IT人材不足を解決することは国を挙げて取り組んでいかなければならない大きな問題なのです。

 

そんな中、外国人エンジニアを雇用する動きも増えてきており、厚生労働省のデータでは2008年から2015年の7年間に情報通信業に就労している外国人の数が18,030人⇒36,522人へと2倍に増加、その数は今も増え続けています。

 

日本の産業自体、少子化の影響を受け外国人労働者なしには成り立たなくなってきている今、技術者として活用したい企業はどのように採用活動を行ったらいいのか?気を付けたいポイントや外国人エンジニアの活用方法について今回はまとめてみました。

 

[参照] 経済産業省 - IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書

 

外国人エンジニアの需要が増加した経緯

 

日本人採用すら難しいITエンジニアの人材不足はどのような背景により生じている問題なのでしょう。

 

この職種ではスキルレベルは、営業やマーケティングといった職種に比べ企業が求める要件がはっきり定義でき、企業と求職者とのミスマッチが起こりにくいのが特徴です。たとえば、「PHPでの開発経験が3年以上」「オラクルマスター Silver以上保有者」といった採用条件があれば、それを満たした人間からの募集しか受け付けない、ということができるのです。

 

転職市場でも外国人エンジニアの需要は非常に高く、求人情報を出してもすぐに採用にいたるケースが多いほど、ニーズ的には引く手あまたな現状があります。

 

またエンジニア歴が長い経験者採用をしたい企業がほとんどで、未経験者を育てていくだけの時間的余裕はないという企業が多いのも需要増加の一因と言えるでしょう。

 

高度人材としての外国人エンジニア

そんな国内エンジニア不足があるなか、法務省入国管理局は2012年5月7日に「高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度」を設けました。これは高度人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類、それぞれの特性に応じ「学歴」「職歴」「年収」など項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が一定の点数(70点)に達した場合に出入国管理上の優遇措置を与えることで、高度外国人材の受け入れ促進を図るものとなります。

 

[参照] 法務省 入国管理局 高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度

 

この制度ではITエンジニアに関わらず様々な分野での高度人材を受け入れようという試みとなっていますが、外国人エンジニアが日本で就労できる環境がどんどん広がっているといえますね。

 

[関連ページ] ベトナム人の「高度人材」とは?ポイント制について解説

 

高度人材が行うことができる3つの活動類型分類
分類 概要

高度学術研究活動
「高度専門職1号(イ)」

本邦の公私の期間との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動

高度専門・技術活動
「高度専門職1号(ロ)」

本邦の公私の期間との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動

高度経営・管理活動
「高度専門職1号(ハ)」

本邦の公私の期間において事業の経営を行いまたは管理に従事する活動

 

実際に外国人を採用するときのポイント

 

外国人エンジニアを日本国内の企業で採用する際には、どのようなポイントがあるのでしょう?初めての場合にはどのように行ったらいいのかもよくわからないというケースが多いと思います。ここでは募集からの流れポイントを見ていきましょう。

 

採用する流れ

1.採用募集

外国人のエンジニアを採用する場合には、強い求人サイトや人材紹介会社、ハローワーク、SNS等を利用することが近道となります。

 

[関連ページ] 外国人のITエンジニアを人材紹介の会社で採用するメリット

 

日本で採用する場合、企業が求めるスキルとマッチしていることは当然ですが、それ以前に日本語コミュニケーションがきちんと取れるかどうかという点が重要となります。外国人エンジニアが技術的に問題なく受け入れてみたものの、日本語コミュニケーションがままならず細かな意思疎通ができず早々に退社してしまったということにならないよう、社内における受け入れ態勢を十分考慮した上で採用活動を始める必要があります。

 

一般的に外国人エンジニア採用は技術職という事もあり、日常コミュニケーションがある程度できればそこまでハイスペックな日本語能力を求めなくてもよいと言われています。基本的にプログラム言語は英語で書かれていることもあって、英語でのコミュニケーションができる人がいれば能力不足も補完することができるでしょう。

 

日本語能力を判断する際には「日本語能力試験(JLPT)」が活用されることが多く、評価はN1~N5の等級があり、ランクに応じて採用が行われます。外国人エンジニアとして必要となる等級はN1かN2というのが一般的ですが、技術力が非常に高い場合であればN3でも良いとされるケースもあるようです。また、試験自体を受けたことがない人でも流暢に喋れる人材も当然いますので、日本語レベルに関する情報が少ない場合でも書面上で気に入った外国人エンジニアの候補者がいれば積極的に面接をしてみることをオススメします。

 

日本語能力試験(JLPT)の等級
レベル 日本語能力 コミュニケーションレベル
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解できる 専門的な内容、新聞の論説など高度で抽象度の高い文章について日本人とコミュニケーションすることができるレベル
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる 一般的な話題や日常場面で使われる漢字を自然なスピードで使うことができ、日レベル
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる 自然のスピードに近い会話が行え、問題なく日本人とコミュニケーションすることができるレベル
N4 基本的な日本語を理解することができる ひらがな、カタカナの読み書きや受け答えを行うことができるレベル
N5 基本的な日本語をある程度理解することができる 日本語を読んだり書いたりする能力に乏しく、ゆっくりした会話、挨拶程度のことができるレベル

 

[関連ページ] 外国人を採用する際に日本語能力をどのようにチェックすればよいのか

 

2.面接候補者の選定

求職者の募集が集まってきたら面接を行う候補者の選定を行っていきます。
そんな中、候補者の選定の際に必ず確認しておきたいことの1つに、就労ビザが取得できる見込みのある外国人の人材かどうかがあります。

 

面接を行い人柄もよさそうなので「いざ採用しよう」と手続きを始めたものの、実は就労ビザを取得できない、ということになれば、これまで行ってきた活動が無意味なものとなります。それを避けるためにも面接を行う前には就労ビザが取得できる人物かどうかをきちんと調査しておきましょう。

 

判断ポイントとしては、求職者の学歴や職歴を元に就労ビザが取得できるかどうかをチェックするのがよいでしょう。外国人エンジニアが日本企業で働く場合「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要となります。

 

また、すでに日本に在留している外国人であれば、「在留カード」も忘れずに確認しておく必要があります。特に「在留資格」「在留期間満了日」「資格外活動許可欄」は条件を満たしているかしっかり確認をしておきましょう。

 

現在まだ来日しておらず、母国や今就労している人材との面接を行う場合には、電話やSkypeなどを活用して面談することもあります。

 

3.採用決定

面接を行って外国人の採用を決定となれば、内定を通知し雇用契約書の作成を行っていきます。雇用契約書は求職者の就労ビザ申請に必要なものとなり申請前に作成する必要があります。雇用契約書自体は日本人の場合と同じ形式で問題ありませんが、日本語だけでなく母国語で用意する必要がある場合もあります。内定を出した後、双方できちんと確認をしておきましょう。

 

また、契約書には「この雇用契約は日本において就労可能な在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として発効する」という一文を入れるのが通例で、万が一就労ビザが発行されず、最終的に採用に至らなかった、といった場合に備えて必要なものとなります。

 

4.就労ビザ申請手続き

雇用契約書作成後は入国管理局に就労ビザを申請することになります。自社の管轄内にある入国管理局に申請を行いましょう。

 

就労ビザの審査・発行には通常1か月~3か月の期間がかかるため、そのため雇用開始予定の時期から逆算して早めに動くことをオススメします。また就労ビザは発行後90日以内に日本に入国しなければ就労ビザは無効となってしまうので、採用予定の外国人が現在は海外にいるケースなど採用から入国までの期間が空いてしまう場合には注意が必要です。

 

就労ビザ申請にあたっては

・海外に住んでいる外国人を日本で雇用するケース

・現在すでに日本の企業で働いており転職するケース
・日本に留学している学生を採用するケース

 

など採用の方法によっていくつかのパターンが存在します。

 

[関連ページ] 外国人を雇用する際に必要となる就労ビザ・在留資格の確認と申請に必要な費用

 

外国人技術者のメリットとデメリット

 

外国人エンジニアを採用できた際にはどのようなメリットを享受することができるでしょうか?またメリットがあればデメリットも当然出てきます。それらはどのようなもので、どのように解消することができるのかをここでは見ていきましょう。

 

採用することのメリット

労働環境の活性化

日本語ができる外国人が新しく職場に来たとしても、これまでとは違うコミュニケーションの形は当然ながら発生します。多言語でのコミュニケーションが積極的に行われることで社内環境も大きく変わりますし、新しい視点を伴う事業アイデアが生まれることもあるでしょう。

 

また採用する外国人エンジニアの人材がベトナムやミャンマーといった東南アジアといった国々の場合、若い労働力を手に入れることができます。これらの国々は平均年齢自体が20代後半~30代前半と若いことや、大学などの教育機関では国を挙げてITエンジニアをはじめとした高度人材育成に力を入れていますので、外国人エンジニアの採用によって社内が若い人材で満ち溢れ、活性化されていくことが期待できます。

 

グローバル化推進

外国人エンジニアを採用した場合にはその時点で母国との足掛かりができますので、新たな人材の雇用を検討する場合、また海外市場への展開を試みようとした場合には活用のチャンスが広がる可能性は高いです。

 

採用することのデメリット

コミュニケーションの問題

外国人はどんなに流暢に日本語がはなせたとしても、文化や生活習慣の違いによって生じる問題はでてくることがあるでしょう。特に宗教や食事に関しては、ここは日本だから郷に入っては郷に従えという感覚で接してしまい、お互いが歩み寄るような姿勢を持たければ長く一緒に働いていくことが難しいでしょう。外国人エンジニアと仕事を行う際には、コミュニケーション不足とならないように、必要以上に意識して接することが求められます。

 

ビジネス慣習上の問題

日本と海外ではビジネスにおける考え方も異なります。そのため日本企業では当たり前の慣習が浸透せず、仕事上の連携がうまくいかないこともあり得ます。プロセスより結果を重視する傾向が強いので、外国人エンジニアには特にIT開発の現場においてプロセスを重視する日本の企業の労働慣習については、入社後にきちんと伝えて理解してもらう必要があります。

 

採用してからうまく活用するには

 

外国人エンジニアをうまく活用するための方法には以下の点に注意することが必要です。

 

[関連ページ] 外国人のエンジニアを採用する際のポイントと活用について

 

日本で働きたい、働き続けたいという意思の確認

外国人が異国で働くことは思っている以上に大変なことです。言葉や文化の違いを乗り越え、仕事で成果を出し続けなければなりません。そのような困難を承知の上、外国人エンジニアとして日本企業で働きたいという思いがどれだけあるのか?について面接を通じてお互い納得いくまで話をする必要があるでしょう。

 

社内体制の確立

日本で働きたい外国人エンジニアのすべてが日本語を上手に使えるわけではありません。また、仕事環境においてきちんとコミュニケーションが取れる環境をどう構築するかは企業それぞれにゆだねられます。

 

たとえば、英語圏の外国人であれば留学経験のある社員やバイリンガル社員のそばにおいてあげるだけで安心させることができるかもしれませんし、英語圏以外での場合であれば、日本語が乏しくてもコミュニケーション能力の高く誰とでも仲良くなれる社員を近くに配置し、外国人に孤独感を与えないように配慮してあげることも必要です。

 

まとめ

 

以上、外国人エンジニアを採用する際のポイントやについて説明してきました。

 

人材不足のIT業界では、日本に限らず他国でも外国人エンジニアの採用を試みようと東南アジアをはじめとした若い技術者の採用に力を入れています。そのような競争に勝って運よく採用できても、労働環境の整備が不備であったためにすぐに退職してしまったということが起きないよう、採用には人材募集と社内体制の確立の両方が必要となります。

 

昨今では、自社で採用活動のすべてを行っていくことは採用担当者の負担も生じることから専門の紹介会社を利用して採用活動を行う企業が増えています。外国人エンジニアという職種にピンポイントで募集をかけることができるだけでなく、技術力や日本語能力による事前のフィルタリングや面接の手配、条件交渉なども行えるのでとてもオススメです!


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